あしたのマンション 目次
あしたのマンション 目次
2:あなたのマンションのポテンシャルを上げる施策
まずは運営ヴィジョンとコンセプトを作って共有しよう
検討者向けのホームページを作ろう
マンションの外と内で欲しいものを書き出そう
予算が足りないと思ったら
粗大ごみ置き場が片付かない?粗大ごみそのものを減らそう
家具のリプレースは慎重に
撮影ルールを作って呼び込もう
共用施設を住民向け教室として開こう
エレベーターかご内掲示はゴールデンゾーン
駐車場、外部貸しする前に
防災備蓄倉庫を整備して、スペースを広げよう
3:民泊対ブリリアマーレ有明。世論形成の起こし方
最高だった、海外でのAirbnb体験
分譲マンションでの民泊
民泊推進派との暗闘
マンション内から民泊を駆逐せよ
4:マンション内カフェバーサービスは、コミュニティ形成の宝庫
住民用カフェはお荷物じゃない。マンションにとっての立派な財産
食とライブを組み合わせて、認知と来店頻度をアップ
5:マンションも個の時代
エリアで誰もが一番のマンションと言われるように
個性を磨くのは良いこと
6:日本一住みたいマンションに向けて
7:デベロッパーへの提言
8:管理会社への提言
9:マンション管理組合への提言
10:あしたのマンション
2−1:まずは運営ヴィジョンとコンセプトを作って共有しよう
理事会は、会社とは違う。
役職は違うかもしれないが、皆が同じだけの権利を持ち、命令権や指揮系統はない。理事長ですら、一票の権利しか無い。
個人の価値観はそれぞれ違っていい。しかし、管理費は自分たちの財布から出ていると考えると、ついマンション全体のスケールを無視し、自分の家計のスケールで考えてしまう。
だから、あなたが「この方向で進めたい」と思っても、理事会のみんなの理想がバラバラの方向を向いているとまったく物事がすすまない。理想の共有や基準というものがなければ、たいていの組織はうまくいかないのだ。
実は私も最初の任期(第4期)の前半で、少なからず、この理事会メンバーの理想のズレによってつまずいたことから、後半をすべて運営のコンセプトを作り込むことに費やした。何かを新しいことを提案しようとすると、お金や時間がとられる。だから、今の理事会から未来の理事会まで、方向性を共有する重要性を思い知ったのだ。
そこで当時の仲間と作ったのが、「ブリリアマーレ有明 クレド」である。
クレド(Credo)はリッツカールトンの事例が有名である。心情や志を意味するラテン語で、活動の価値観や行動規範を簡潔に表現している。このため、理事会を超えて住民全員で共有するべきヴィジョンと、理事会と実際の管理を担当する管理会社の運営コンセプトを短い言葉で作ることにした。
我々のクレドはVision「非日常が日常であるために」という文言から始まる。
ブリリアマーレ有明の最上階は全住民に開かれた場である。5つ星のリゾートホテルと同クラスの非日常を感じる贅沢な空間が用意されているが、そこに住む住民と理事会、管理を請け負う管理会社、全員がこの空間を維持していくのだ、という志の共有をまず掲げている。
その下に運営コンセプトとして、3つのKeepを入れた。
この3つのKeepは、意訳をするなら「ハードウェア的な空間の維持とソフトウェア的な空間の維持」である。ハードウェアの意味であれば、相当なお金がかかる外装と内装を、それなりの頻度とレベルで維持していくという覚悟を示している。
重要なのはソフトウェア的な空間の維持である。いくら内装を保っていても、利用方法がまずいと、空間の品位がなくなってしまう。だから「知性を持っている住民たちによる、この空間の維持」としている。私たちの共用施設は、お酒を出す場所もあるけれども、子ども達の無法地帯であってもいけないし、酔っ払った大人たちの乱痴気騒ぎをする場所でもない。知性を持った大人による理性のある節度ある利用と、そこで育てられる子ども達が影響を受けて、きちんとした利用方法を心がける、という理想を短い言葉で書き出した(※1)。
これをクレジットカードサイズで作って、1080戸に配るのと同時に、理事会役員・管理会社・警備やコンシェルジュ、清掃員含めて全員常時携帯するルールとした。
いいチームは、必ずヴィジョンと目指すべき方向性が共有されている。ブリリアマーレ有明の理事会は、良いチームであるが1年毎で半数が入れ替わってしまうのでヴィジョンや方向性を作っても数年で雲散霧消するリスクが有る。そこで携帯しやすいクレジットカードサイズでつくることで、その後の共有を容易にし、その後の理事会も円滑に進むことを考えた。その後10年、20年と理事会の理想を書き込む場所なので、数ヶ月かけて議論したほうがいい。
みんなが納得して目指す理想が共有されていれば、物事は決めやすく、新しいことも進めやすくなるのだ。
※1:
なんでこんなことを書いたかだって?
最初の頃のバーラウンジは、カッシーナのソファーでアスレチック並みに騒ぐ子ども達と、それを放置して大声で酔って騒ぐ大人たちがいっぱいで、本当にひどかったからだよ!